友人Hに貸していた椎名誠さんの『走る男』が返ってきた。

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直接感想など聞いてはいないが、自信を持って人に勧められる変な本だと断言できる。
パンツ一丁で何かから逃げるように走る男が主人公という設定からして先制パンチ喰らいまくりである。
椎名さん特有のシーナワールドというやつだ。舞台の説明がない。読者はまず案内人が居ない危険な世界に放置される。初めてシーナワールドに立ち寄った読者は、その世界のルールに慣れるまできっと苦痛かも知れない。何度もシーナワールドを旅している私でさえ、久しぶりだとちょっと読むのが遅かったりするくらいだ。
但し一度世界観が掴めると一気に面白くなる。そして物語りに終わりが来るのが惜しくなる。
シーナワールドの特徴は、何らかの原因で起こった第三次世界大戦後の、亜細亜圏内の混沌とした世界というのが概ね共通の舞台だ。それが海を舞台にするか、都市を舞台にするかの違いだけだ。
舞台はキテレツだが、生活している当事者たちの皮膚感が現代を生きる我々と変わらないから、読者があたかもシーナワールドに生きているかのような錯覚に陥るのだ。
シーナワールドは共通の世界観の上で話が成り立っているので一冊でも面白ければ芋づる式に他の本を紹介できる。Hが気に入ってくれていればよいのだが。