中国でお尻を手術。

バックパッカーに限りなく近い旅行エッセイ。 旅行エッセイと言うとその土地土地の情景が思い描かれるのが普通だが、それ以上に人・人物・人間が正直に描かれている。吃音に悩む作者や自分に正直なモトコ夫人、旅先で出会う人々との距離感が近くて生きていることを実感するのだ。 中国での生活が中心で、まさにその場にいないと味わえない人づきあいが正直に描かれているので、ときどきむかっ腹が立つけど清々しい文章だった。

中国でお尻を手術。 (遊牧夫婦、アジアを行く)

中国でお尻を手術。 (遊牧夫婦、アジアを行く)


ミシマ社フェアを自店で実施するに当たり2冊ほど読んでみました。

毛のない生活

いわゆる闘病日記なのだが涙を誘うような文章は少なく、闘病生活から脱却するまでの事実が淡々と書かれているので、構えずに読めた。人間は本来持つべき自然に即した生き方が一番なのだな。 著者の山口ミルコさんは人生や社会人の先輩にあたる世代なので、今後自分の身にもいつ降りかかるか分からない現実を見た気がする。普段から食生活に気を配り、健康的な生活を送ることがあらゆる体の異常の予防にもつながるのだ。しかし、それでも異常事態に陥ったらこの本のことを思い出して、自分が今何をすべきなのかよく考えて対応しようと思う。

毛のない生活

毛のない生活

僕と日本が震えた日

今すべきことは、震災の事実を正しく知り、風化させないことだと思う。

僕と日本が震えた日 (リュウコミックス)

僕と日本が震えた日 (リュウコミックス)


今年の2月に実際に被災地に行ってきたのですが、活気づいて復興していく力強い流れと、全く手付かずの瓦礫の山と、両方を目の当たりにして自分に何が出来るのかを自問自答しました。何をしたらいいのか、何が正解なのか分からないけど、風化させてしまうことが誤りだということは分かっているのです。

カイシャデイズ

仕事は楽しまなければな、と思える1冊。 いい加減だけど面倒見のいい中間管理職や、周りの言うことを聞かないデザイナーやら、ほんとにどこにでもいそうな人たちが楽しく仕事している。起きてる時間の大半が仕事に費やしているのだから、仕事はやっぱり楽しまなければいかんのよ。 最近仕事に後ろ向きになっているなあと感じている方に読んでほしいです。面白いから。

カイシャデイズ (文春文庫)

カイシャデイズ (文春文庫)

南の子供がいくところ

架空の南の島で起きる不可思議な物語の数々。南の島独特のからっとした風や、ねっとりとした、呪術が施されたような夜が肌にまとわりつくような世界。全編を通して主役のすぐ横に存在する自称120歳のユナという女性が物語の背骨を担っている。歴史はさかのぼり、また、現代に戻り、いつしか読者は不可思議な世界がさも実在するかのような錯覚に陥る。 おばあさんに昔語りを聞いたようなそんな作品。読者側にいる限りそれはとても魅力的な世界。

南の子供が夜いくところ

南の子供が夜いくところ

約束の森

警視庁公安部を退職した男が与えられた仕事は、素性のわからない赤の他人との疑似親子を演じることだった。心を閉ざした男はそこで、人間に虐げられ生きる気力を無くした一匹の犬と出会う。 様々な組織の思惑が交錯する中、疑似親子と犬はゆっくりと過去を清算し、今を生きる活力を取り戻していく。 日常が丁寧に描かれ、いつの間にかクライマックスに向かっていた。ラストのどんでん返しは圧巻です。3度泣きました。

久しぶりに読みごたえのある本を読んだなあというのが率直な感想です。これからもっと多くの方に読んでいただきたいと思いますし、角川書店さんも力を入れて売っていこうという流れになってきています。去年のジェノサイドみたいに広がっていく気配がしますね。

約束の森

約束の森

香菜里屋を知っていますか

北森鴻はいくつものシリーズものを手掛けていたが、それぞれのシリーズの主人公も顔を出す、三軒茶屋のビアバー『香菜里屋』。そこのマスター・工藤は客の話を静かに聞き、様々な謎を解き明かす。
工藤の人柄と、彼の手掛けるひと工夫施された料理の数々は訪れた客を最高級にもてなす。
そんな彼がシリーズ完結編にて突如姿を消してしまう。それは過去に起きたある出来事がきっかけだった。
惜しまれつつも亡くなった北森鴻と突然姿を消したマスター・工藤がどうしても重なってしまい、もう工藤が登場する話が読めないのだという残念な気持ちになる。
ちょっとした大人の会話が飛び交うこのバーは登場人物のみならず読者も常連然とした気持ちにさせる、不思議と落ち着く作品だった。

香菜里屋を知っていますか (講談社文庫)

香菜里屋を知っていますか (講談社文庫)