きつねのはなし

きつねのはなし

発売されたのは少し前ですがこの本だけ読んでいなかったので読了。失礼ですがモリミーは普通の文章も書けるのですね。他の著作に比べると妄想ワールドは封印されていて、歴史ある京都の『妖し』の世界が垣間見られます。不可思議な、捉えにくい結末ばかりの短編集です。
なお、今月の編集会議は森見登美彦氏の特集です。
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ユージニア (角川文庫)

ユージニア (角川文庫)

自店で欠品してたので文庫のA君をせっついて仕入れた本。恩田さん曰く「デヴィッド・リンチ監督の『ツインピークス』みたいなお話」で、正しい例えだなと思いました。今まで恩田ワールドはフランス映画と思っていましたが実はデヴィッド・リンチだったんですねえ。恩田さんは作品によっては結末がモヤッとするので読後感がすっきりしないこともあったのですが、この作品はモヤッとしながらも人間の内面の恐ろしさのようなものを感じさせる結末で、腹に落ちました。ちょっと浦沢直樹の『モンスター』に似てるかも。

詩羽のいる街

詩羽のいる街

表紙と乙一氏の推薦文に釣られて購入。乙一氏は梶尾真治の『おもいでエマノン』を思い出したそうです。私は梶尾さんの小説のほうは読んでいないのですが、確かに主人公である詩羽は鶴田謙二作品のエマノンや『Forget-me-not』のマリエルに雰囲気が似ています。ジーパンを格好良く履きこなすようなイメージです。
詩羽は独自のコミュニティを確立させたいわば人と人との媒体のような存在で、彼女は周りの人の幸せを手伝うことを生業としています。一見理想論のようにも思える発想が、意外と現実的で皆が真似すればもっと住みやすい世界が作れそうな気がしてきます。
作者の山本弘グループSNE出身で学生時代ソードワールド作品をよく読んでいたので、本屋で見つけたとき昔の友人に久しぶりに再会したような気になりました。