伊坂幸太郎2年ぶりの書き下ろし。文芸書の新刊を久しぶりに発売日に買った。それだけ待っていた作品だ。
何か巨大な組織に首相殺しの濡れ衣を着せられて逃亡生活を図るある男の物語。相手がなんなのかが分からず、男の感じる不安であったり不快感であったりがダイレクトに伝わってきて、自然と読み手を仙台の街に引き込む。伊坂作品の多くは仙台を舞台にしているが今回は仙台の駅周辺が舞台のひとつだ。
相手が分からず追い詰められるこの作品は時に不快感を感じるが、あえて言うならば『ワクワクするような不快感』だ。スピルバーグの作品でデビュー作『激突』にでてくるトレーラーの運転手の腕のような存在感で男を追い詰めていく感じに似ている。
伊坂作品に多く見られる各所にちりばめられた伏線が終末に全て束ねられる。一気に読むスピードが加速して、読み終えてふっと一息入れる。
11月発売なので本屋大賞にもノミネートできる。おそらく去年の森見登美彦のように上位に食い込むだろうな。