のぼうの城

のぼうの城

のぼう様天晴れ!
時代小説の独特の雰囲気をかもし出しつつ、あまり時代小説を読んだことの無い方にも読みやすくてお奨めです。
のぼう様こと、成田長親は『武』も『智』も乏しい武士でありながら、不思議な魅力で配下の並み居る武将を束ね、領民の結束を呼び、やがて石田三成軍に真っ向から対峙する。何か戦術を練ったわけでもない。一騎打ちなどしていない。なのに誰しも彼を認め、忍城の総大将に担がれている。長親が持っているのはただ純粋さだけだ。三国志の蜀王"劉備玄徳"の『義』で蜀を束ねたのに似ているかもしれない。しかし、ただ一点違うのは、のぼう様は彼らからすれば保護すべき子供のような存在なのだ。「自分が面倒見なければのぼう様はてんで駄目なんだ」幼い子供にまでそう思われ、慕われている。人が垣根を作り、やがて大きな力を生み出す。壮大な物語だ。