シャングリ・ラ 上 (角川文庫)

シャングリ・ラ 上 (角川文庫)

シャングリ・ラ 下 (角川文庫)

シャングリ・ラ 下 (角川文庫)

新刊『テンペスト』が好調な池上永一氏の近未来SF小説。上下巻で非常に長いのですが全く飽きさせず、ジェットコースターのように一気に終幕まで進みます。
舞台は地球温暖化対策として森林化を進めた東京。CO2を削減するために、世界は炭素を基準にした炭素経済に移行。二酸化炭素を多く排出してしまうと課税されてしまうため、日本が取った方法は東京を森林化して、都市機能を超高層建造物アトラスへ移すというものだった。主人公である北条國子はかつて新大久保があった場所に拠点を構えるゲリラ集団の総統として政府軍や、アトラス公社と戦いを繰り広げられます。しかし、ストーリーは二転三転し、今まで敵だった人間が味方になったり本当の敵がどんどん分からなくなっていきます。元最強の格闘家で今は國子の母親役であるニューハーフや、嘘をついた人間は必ず変死を遂げる強大な霊力をもった少女、その少女を献身的に守る冷徹な女医博士、炭素世界経済の担い手である「カーボニスト」の中でもトップクラスの才能をもった若者たち、さらには意志を持つ巨大なシステムや軍事施設などありとあらゆる、いわば人類を超越した人物たちがこれでもかと言わんばかりに活躍します。
現実にはあり得ない設定ながら、一旦常識の範囲を取っ払って過程と結果だけを単純に計算するとあり得そうな話だから余計面白かったのかもしれません。