アジア新聞屋台村 (集英社文庫)

アジア新聞屋台村 (集英社文庫)

いやはや高野さんの体験談はいつ読んでも破天荒で面白い。高野さんは辺境探検家のようなイメージだったが、今度の舞台はアフリカや東南アジアの山奥ではない。新大久保である。
新大久保と言えば、言わずと知れた日本最大級のコリアンタウンである。私の知り合いが勤めている新大久保のブックオフでは従業員の半分が韓国人であるという。
新大久保にある、アジアのエキスがぐっと凝縮された『エイジアン』という多国籍型新聞社に、縁あって出入りするようになる高野青年。きっかけはある一本の原稿依頼の電話からだった。
『エイジアン』で働く魅力的で躍動感に溢れるアジア人に囲まれながら高野青年も自身がアジア人であることを強く認識する。
それぞれがさまざまな言語圏にありながら日本語を共通言語とし、5紙も6紙も月刊の新聞を発行している彼らを称して、高野青年は屋台村のようだと感じる。決してプロではないアマチュアの集団が寄り合いながら新聞を作っているのだ。なんだかよく分からないではないか。それこそが『エイジアン』の最大の魅力なのだということが伝わってくる。今も『エイジアン』のモデルになった新聞社があるなら行ってみたい。
高野さんの本読むといつも、「おれも何かしなければ!」と思ってしまいます。文章がうまいなあ。
高野さんの文章は人物像がイメージしやすくて読みやすいのです。朴さんって美人なんだろうなあとか、劉さんはあの女優さんみたいかなとか。武蔵丸の顔したバンバンさんなどそのまんま。