香菜里屋を知っていますか

北森鴻はいくつものシリーズものを手掛けていたが、それぞれのシリーズの主人公も顔を出す、三軒茶屋のビアバー『香菜里屋』。そこのマスター・工藤は客の話を静かに聞き、様々な謎を解き明かす。
工藤の人柄と、彼の手掛けるひと工夫施された料理の数々は訪れた客を最高級にもてなす。
そんな彼がシリーズ完結編にて突如姿を消してしまう。それは過去に起きたある出来事がきっかけだった。
惜しまれつつも亡くなった北森鴻と突然姿を消したマスター・工藤がどうしても重なってしまい、もう工藤が登場する話が読めないのだという残念な気持ちになる。
ちょっとした大人の会話が飛び交うこのバーは登場人物のみならず読者も常連然とした気持ちにさせる、不思議と落ち着く作品だった。

香菜里屋を知っていますか (講談社文庫)

香菜里屋を知っていますか (講談社文庫)