下町情緒

シー・ラブズ・ユー (2) (東京バンドワゴン)

シー・ラブズ・ユー (2) (東京バンドワゴン)

前作の東京バンドワゴンを表紙買いしてから、しばらくして続編が出たので購入。
下町の古本屋を舞台にした人情派なお話です。
前作もさることながら今作も登場人物の多さに少々戸惑う。なにせ古本屋の設定が四世代同居一家であるから、1作目を読んだときはいちいち前のページを振り返って確認したりして読んだ記憶がある。まあ、今作はそこまで戸惑うことは無かったが、それはきっと作者の描く下町の大家族の賑やかさに慣れたということなんだろう。
4つの短編集になっているが、必ず一家全員での食事のシーンからお話は始まる。食事中に飛び交う会話が順を追って書かれないので誰が誰と話しているのか分からなくなりそうだが、まさしく一緒に席についているような気になるから不思議だ。
物語は一家の大ばあさんであるサチさんの視点で描かれている。
サチさんは実は数年前に他界し今は言ってみれば幽霊なんだが、まったく悲壮感など無く一家を温かく見守っているのである。これは物語を俯瞰で見ることが出来るのでサチさんは物語の登場人物でありながら、読み手にとってのガイド役なのである。
物語には中心人物が居ない。
一家の誰もが個性的で、それぞれのお話に一家総出で参加するといった感じだ。
サザエさん』はサザエさん中心で人間関係やらが広がっている感じがあるが、東京バンドワゴンの堀田一家は全員から人間関係のくもの巣が広がっている。堀田一家が主人公なのである。
古きよき時代を思わせながら実は現代のお話なのでどこか懐かしくもあるし、東京にはまだこんな下町が残っているんだと思わせる面白い作品でした。
次回作も出そうな終わり方だったのでまた楽しみに待ちます。