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廃墟建築士

廃墟建築士

隣の家の不思議な出来事のような話を、次から次へと発表する三崎亜記。今作品は建築物に焦点を当てた4つの短編が収録されています。
第1話の「七階闘争」はある地域で建物の七階に住む住人達が、七階を守るために市民運動を繰り広げるというもの。建物の階層に愛着があるという発想はあり得ない発想だが、自分が生まれ育った地元に愛着があるということと同じなんだろうか。なかなか理解しにくいシチュエーションです。
第2話は表題の「廃墟建築士」の話。廃墟を芸術と見立てて、廃墟にするために建築をするというもの。
第3話は「図書館」の話。図書館の蔵書は夜縦横無尽に飛び回っているという、どこかハリーポッターを彷彿とさせる設定。他の短編からの主人公が珍しく再登場しています。キャラクターが分かっているせいか、4編のなかで一番面白かったです。
第4話は「蔵守」。蔵守の視点と蔵そのものの視点から描く作品。蔵が自我を持ち、自分自身の存在などについて悩み苦しむ様が描かれています。そもそも自分は何を守っているのだろうかと。
三崎さんの物語はたいていその世界の常識(リアル世界での非常識)についてあまり説明がされないことが多く、「ああそういうもんなんだな」と納得させてからでないと読みにくいのが特徴です。